これでいいのだ!男の本望を演じてみせた名脇役 俳優 高品格…..「麻雀放浪記」

1.「麻雀放浪記」の関連動画と作品概要

 

 

1)関連動画

 

 

真田広之「麻雀放浪記」・かにやで銀シャリ朝飯

 

 

 

2)作品概要

 

作品名:「麻雀放浪記」

 

1984年公開

監督:和田誠

 

出演:真田広之

鹿賀丈史

加藤健一

名古屋章

高品格

大竹しのぶ

加賀まりこ

 

阿佐田哲也氏の小説を元に作られた作品です。

 

本作は麻雀を知らなくても楽しめる作品になっていますよ。

私自身も麻雀のルールは知らないし全くやったこともありません。

 

また監督の和田誠さんはイラストレーターの方で、本作が初の監督作品でした。

彼の「お楽しみはこれからだ:映画の名セリフ」(1975)は、読みましたね。当時。

文章も彼の絵も良かったんですよ。

 

 

 

 

2.これでいいのだ!男の本望を演じてみせた名脇役 俳優 高品格

 

 

 

 

1)名脇役:高品格

 

以下、ネタバレあります。

 

 

 

 

高品格演じる出目徳がヒロポンを打ちながら麻雀をし、ついに雀卓の上に突っ伏して事切れます。

他のメンバーに金品など身ぐるみはがされ、彼の遺体は家の近くの土手から投げ捨てられます。

(原作の小説では、衣類もすべて剥がされ真っ裸にされてたはずです)

 

遺体は土手をコロコロ転がっていき、家の近くのどぶに、ボチャーンと、うつ伏せではまってしまうんですね。

 

このシーン、笑ってしまいました。

その、コロコロ体が回って転がっていく様が妙におかしくて。

でも秀逸。

よくぞきっちりうつ伏せでどぶにはまりましたね・・・

高品格さん、凄いな・・・。

 

虚しいというか無常というか・・・このシーン、徹夜マージャンのあとの明け方、早朝のヒンヤリした空気も感じられて、余計に、冷え冷えとした、でもあっけない雰囲気が感じられて良かったですよね。

 

出目徳演じる高品格は、背をちょっと丸めて座っている姿がとても印象的でした。

このとき高品格さん、65歳。

初老のバイニン(商売人、つまり、ばくち打ち)、麻雀がすべて・・・とでもいうような雰囲気がよく出ていましたね。

惚けてて、でも太々しい、勝負には冷酷なオヤジ、そして彼の声が渋くてこれまたいいんです。

 

この出目徳の死のシーンを観て、ふと「志士は溝壑(こうがく)に在るを忘れず、勇士は其の元(かうべ)を喪うことを忘れず」という言葉を思い出しました。

 

元は孔子の言葉だそうで、吉田松陰が書いた「孔孟箚記」という書物の中に出てくるんだそうです。

私は司馬遼太郎の「竜馬がゆく」でこの言葉を知りました。

 

勿論、バイニン(ばくち打ち)と志士とは全く異なるものです。

ただ「志士は、その屍を溝や谷に棄てられてもよいと覚悟しておけ」という意味から、出目徳も、ばくち打ちは死んだらおしまい、身ぐるみはがされて溝に捨てられてもいい、と覚悟していたんじゃないかな、とふと思いましたよ。

 

ドサ健は言います。

「奴は死んだ、つまり負けたんだ。負けた奴は裸にならなくちゃいけねえさ。」

 

 

麻雀の最中に雀卓の上で死んでしまうなんて、残念無念というよりもむしろ「男の本望」を遂げた、という感覚なのかな・・・と思いましたね。

 

あっけない終わり方ですが、妙にさっぱりしているというか・・・「これでいいのだ!」ってとこでしょうか。

 

 

初めて本作を観てから数十年は経っています。

その当時、出目徳(高品格)にここまでの関心は持たなかったように思います。

 

やはり自分自身も年を重ねて、改めて本作を観ると、出目徳に一番惹かれてましたね。

 

 

2)男の顔は履歴書

 

本作で真田広之演じる坊や哲は16歳という設定なんです。

作中でも自分のことを「僕」と呼称するのが何か新鮮でしたね。

このとき真田さんは24歳。若いです。

惚れ惚れするような男前です。

顔が逆三角形なんですよ。

頬のたるみなど一切ない。

シュッとした男前です。

一本気で純情な青年を演じてました。

 

ラストシーン、ドサ健(鹿賀丈史)と女衒の達(加藤健一)が、疲れきったような、呆けたような表情をしているのに対し、坊や哲だけ、どこか明るい浮き浮きしたような表情を見せていたのが対照的でとても印象に残りました。

 

でもこのまだ子どもっぽい真田さんが、後に「たそがれ清兵衛」(2002)であんな表情を見せるようになるとは・・・

 

一方、高品格さんは、1919年、漁師の息子として生まれ、中学を出て一時期、プロボクサーを目指してたんですね。

典型的なボクサー顔ですもんね。

で、3年後、役者を目指し、日活に入社します。

2度も応召を受けているんですね。

 

1939年のデヴュー。

「嵐を呼ぶ男」(1957)でボクサー崩れの用心棒を演じたようにどちらかというと悪役、そして脇役一筋45年!

 

ついにこの「麻雀放浪記」で日本アカデミー賞はじめ助演男優賞を総なめ。

 

凄いですよね。

この一作のために45年、役者、脇役やってきたのかよ・・・って感じ。

 

まさに「男の顔は履歴書」だよなあ、としみじみ思いました。

 

ちなみに高品さん、1994年NHKで大河ドラマの打ち合わせ後、帰宅途中、車の中で苦しみ、心不全のため亡くなられたそうです。

う~ん、まるで出目徳・・・

 

3)銀シャリ

 

徹夜マージャン明け、メシ家で坊や哲が「銀シャリ」と味噌汁を食べるシーンも印象的でした。

坊や哲にとっては「銀シャリ」は夢の食べ物だったわけですからね。

勝負に勝って稼げば、美味いめしが食える・・・という、刹那的ではありますが、ばくち打ち=勝負師の世界を象徴していいシーンでした。

 

ところでドサ健は、熱燗を飲んでますね。早朝から。

いいですよね、このシーン。

 

 

 

3.あとがき

 

本作の共演者がまた皆、良かったんですよ。

キャラが立ってて。

 

鹿賀丈史、加藤健一、名古屋章、大竹しのぶ、加賀まりこ・・・

 

篠原勝之、天本英世もちょい役で出てるんですよね。

 

いや、皆さん素晴らしい・・・・

 

先日観たモノクロの「月曜日のユカ」

あれから、モノクロのこの作品をどうしても観返したくなりました。

 

若い頃、観た作品を年とってからまた観るのって、やはりいいものですね。

 

 

 

 

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